a deep sigh

冷たい毒

「心」
旅立つ日
お別れの日
どれくらいの人が泣いてくれるの
私がいなくなった後
どれくらいの人が思い出してくれるの
空の向こうから何が見えるかな
そしてまた生まれ変わることが出来たら
優しい腕に抱かれ
ぬくもりを知ったら夜に怯え
私は名も無い心
どんな風にこれから形を変えていくの
やがて会う人と愛が生まれたら
拙い足取りでも笑って進もう
旅立つ日
お別れの日
あなたが呼んでくれた私の心

「命の嘘」
疲れた身体を癒すように
歌う声が胸に響いて
今日の僕は何が出来ただろう
そんな事で夜は長くなっていく
また一つ一つずつ
美しいものが消えてく
変わらないものなどないから
あの時あの場所で
僕が見た輝きが
霞んでしまうほどの
光を見せてほしい
夢が壊れてしまわぬように
嘘をついて偽物になった
何のために今日が来たのだろう
今日の僕は正しくいられたのかな
ある朝目覚めたら
どこか知らない世界で
知らない名前で呼ばれて
そうやって始まった架空の光に魅せられ
何にも出来ないまま明日がまた始まる

命の嘘

「衣」
旅立つ人を見送り手を振ろう
これから先の話をいつか聞かせて
誰かのことを思いながら生きた
私の知らない日々のあなたのことを
記憶は少しずつ消えてなくなるから
私が大切にしていた思いでさえ
旅立つ人を見送り手を振ろう
これから先の話をいつか話そう

「死に向かう者たち」
僕はゆっくりと支度を始める
出発はもうすぐだとそんな気がして
長い戦いも終わりが来るだろう
何もない階段を一歩ずつ登る
死に向かう者たちは
ただひたすら前だけに向かって
その先に待つものが
何かもわからないまま
今日がまた終わってく
長いトンネルをくぐって
武器を捨て鎧を捨て
光を抱き締める
死に向かう者たちは
止められない歩みを受け入れて
足跡を残してく
生まれてくる者のため

死に向かう者たち

「抱擁」
また誰を傷つけた
僕らは身を守るために棘を纏う
酷い言葉を言っては
その度に後悔をする
それでも一人にはなれずに人を求める
悲しみで凍りついた
心は動かないまま
信じることが出来ず孤独になって
受け入れようとした時
あなたが目の前に来て
心に触れる
抱き締めて棘が刺さっても
離さずにあなたは笑った
悲しみから救い出すために
流れる血のことも忘れて
私達は人を抱き締める
温もりを肌で感じる
いつか誰かの孤独と出会ったら
僕の方から

抱擁

「機械」
騒がしい朝と
呼吸を整えて
歯車は噛み合う
鈍い音を立てて
あなたと話すため
機械を握り締め
あなたと会うために
機械に運ばれる

機械

「吹かれた砂」
笑い話を聞きたかった
よく晴れた日のことだった
冬の空に向かって
白い息が消える
知らないことが増えていった
自分の愚かさに気付いた
積み上げてきたもの
そんなものはなかった
幸せはまるでこぼれていく砂のよう
握りしめた手をすり抜けて
風に吹かれてく
泣きたい時に泣けなかった
言いたいことも言えなかった
冷え切った身体だけが
寂しく一人になった
形がないから怖くなってしまうよ
私に残った思い出も
風に吹かれてく

二白鳩