水槽

lyrics

「寒かったね」とマフラーを解く仕草がスミレを揺らす静かな風と重なった。
リトアニア行きの列車は瓦礫を追い越した。
悴んだ手を畳んで、狭いファインダーを通して眺めた朝焼けを覚えている。
朱く白んでいた。
追憶するたび季節が戻ってきた。
朝食の並んだテーブル、窓の外には黒い胡桃の目をして遊ぶ兎を見た。
リトアニア行きの列車は国境を横切った。
車輪の揺れる音が遠くに聴こえた。
リトアニア行きの列車は速度を落とした。
幽い霧を抜けたらあの街が見えた。
透明な思い出が色づくように光を返した。
追憶するたび君の影が追ってきた。

written by komei

リトアニアへの旅の追憶

K県Y市出身。都内某大学在学中。オルタナティブ音楽家気取り。百三階段というバンドのBa.

水槽

ベル（Bell）

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