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夕暮れの職員室。校長のヨシオカは、教師たちと丸く机を囲み、「未来語りダイアローグ」を始めようとしていた。外の空が茜色に染まる中、教師たちの顔にはそれぞれの思いが浮かんでいる。
「今日は、私たちの学校で進めているペアテストや協力学習について、皆さんが感じている課題や不安を出し合いながら、未来の可能性を話していきましょう。」ヨシオカは穏やかに語りかけた。
現場からの声
まず、担任のハルナ先生が手を挙げた。
「協力や対話を重視した学びは、生徒たちの成長に素晴らしい影響を与えています。でも、最近、暗記が苦手な子どもたちが『どうせ誰かが教えてくれるから』と、自分で覚えようとしなくなっているのが気になります。」
体育のタムラ先生も続けた。
「協力が強調されすぎて、自分一人で物事に向き合う力が弱まるんじゃないかと心配です。特に、運動会の個人種目なんかで、自信がない子が増えているように感じます。」
さらに、新任のタカハシ先生が勇気を出して言った。
「私もこの学校の理念には共感していますが、社会に出たとき、個人の責任を求められる場面で戸惑うことがあるんじゃないかと考えてしまいます。」
教師たちの声に耳を傾けながら、ヨシオカは深く頷いた。

全員が話し終わると、ヨシオカはゆっくりと口を開いた。
「みなさんの懸念はとても重要ですね。協力を重視する中で、子どもたちの個人の力が損なわれるのではないかという不安。私たちが目指しているのは、協力と個人の力を両立させることです。そのための未来を、皆さんと一緒に考えたいと思います。」
少し考えた後、ヨシオカは提案を始めた。
「例えば、ペアテストの中に『自分一人で答える時間』を組み込むのはどうでしょう。その答えをもとに、ペアで話し合い、最終的な答えを出す形式です。そうすれば、まずは自分の考えをしっかり持つことが求められます。」
ナカムラ先生がすぐに頷いた。
「それは良いですね。子どもたちに、まず自分で考える癖をつけさせられます。」
タムラ先生も口を開いた。
「体育でも、個人の成長を強調する時間を増やしてみます。一人で目標を設定して、それを達成するプロセスをペアと共有する仕組みにすれば、協力と個人の両方を育てられると思います。」
新任のタカハシ先生は少し安心したように言った。
「社会で必要な個人の力も鍛えながら、この学校らしい協力の形を守れるのですね。未来が見えてきた気がします。」

ヨシオカは教師たちの目を見ながら、最後にこう語った。
「私たちの学校の理念は、『共育』です。それは、誰か一人の力で作られるものではありません。皆さんと一緒に、未来を編むようにこの学校を育てていきたい。子どもたちが社会に出たとき、個人としても、協力者としても輝ける大人になるために。」
その場にいた全員が、未来に向けて新たな希望を感じていた。夕陽は職員室の窓から差し込み、机の上を暖かく照らしていた。教師たちの中に芽生えた新しいアイデアは、この学校にまた一つの輝きをもたらすだろう。
「協力と個の成長を紡ぐ」。それが、この学校の次の一歩だった。

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