[AI-MGRoid cover]平沢進-金星

見上げたら

吸い込まれそうに遠い空を鳶が舞うとき
町を見渡せばみんな前だけを見ていて
あの雲のしたで
輪を描くふたつの影はきっと海まであっという間
こんなにうつくしいものを
見落として生きていくなんて

途切れそうもない音の渋滞の遥かうえで
流れる雲のふちにうつり消えてゆく夕日の
やさしい朱色を
その向こうに広がるキャンバスのように淡い西の空を
瞬きの間にも変わってゆくのに
立ちどまるほどのこととも思わない

あたまの上を駆けてゆく車が
窓にうつっているだけだと知って

世界のまわる速さに追いつけなくて
きょうもわたしは空をみる

昔からわたしのいる時間だけが
どうもゆっくり流れているみたいだった
校庭を走る授業の途中で
空の青さに打たれて立ち尽くした

友だちに空がきれいだったねと言ったら
だれもそんなものを見ていなかった
わたしの部屋に遊びにきた友だちが言った
ここは時間が止まっているみたいね

あたまの上を駆けてゆく車が
窓にうつっているだけだと知って

世界のまわる速さに追いつけなくて
きょうもわたしは空をみる

あたまの上を駆けてゆく車が
窓にうつっているだけだと知って

世界のまわる速さに置いていかれて
きょうもわたしは空をみている

世界のまわる速さに追いつけなくても
いいよと優しいひとが言ってくれた
けどまだわからない

からまた空をみる

見上げたら

人のいない時にだけ
姿をみせる
あなたを見ていると
ほんとうのことは手をすり抜け

のこされたそらのへりに
ときが淀む

幻を追いかけても
見たのか  あったのか
胸の中にもない

瞼の裏に
浮かんだ  浮かべた
あなたは  幻

人のいない時にだけ
姿をみせるの
あなたの微笑みはくずれない
ほんとうの口ならなんと

のこされた息継ぎに
ときが淀む

幻の鳥

地面が泡立つ雨
風が吹くの
このまま雪が降るかも
って思うくらい白い空  空だね
そのうち晴れるんでしょ

ほら晴れてきた
青い空がのぞくよ
こりゃ～暑くなりそうだ
電気もいらないかもしれない

地面が泡立つ雨
は通り過ぎた
このまま元通りだね
って思うくらい光る空  空だね？
そのうち窓の水滴も乾く

風が強くって

ささえがほしい
ささえがほしい
背もたれのような
ささえがほしい
ささえがほしい　いま

コツは背を腰に立てる
目を水平に保つ

そらを舞うおおきな翼で
あなたが泣き止むまえに
肩をつつむ
妄想

離島に行く
離島に行く
書きつけは意味を為さない
離島に行く
離島に行く　から

そらを舞うおおきな翼で
あなたが泣き止むまえに
肩をつつむ
もう遅い

おなかに力を入れる
肩甲骨を寄せる

よい姿勢

見えないからかたちある場所に
縋るしかないよ

ねぇそこはどんなにひろくて
かなしいところ

ねぇそこで待ち人と
手を合わす

頭の中とりだせる思い出は
あの日までのものと
きまってしまった
あたらしい場所もあったのに

とんでもとんでも会いにゆけない
遠い国

見えないからかたちある場所に
座り話をしよう

こどもだからと
遠ざけられたくない
時間がかかるってだけ 

結婚式を
みるまではと
言ってくれたのに
覚えてるでしょう
どこでも

ねぇ そこはどんなにひろくて
やさしいところ

ねぇ ここで夢をみれば
とゆめみてみた 

とんでもとんでも会いにゆけない
遠い国

とんでも

The past one makes me go somewhere 
not now exist

Who cares the shores come up 

the past one makes me go somewhere 
not now exist 

ゆめの なかを およぐ さかな

The past one makes me go somewhere 
not now exist 

海藻

手のつめを切ったよ　誰もいない家の中で
守る人も脅かす人もいない家の中で


何年同じことを言っているの
まるで成長していないの

籠をとびだすと歌いながら
与えられるベッドで眠る


堰を切ったように歌えていたでしょ
胸が固まりなにも出てこない


手のつめを切ったよ　誰もいない家の中で
守る人も脅かす人もいない家の中で

映画『ティファニーで朝食を』より

Moon River (cover)

あつめた陶器の花瓶がいくつも
お墓に並ぶ夢を見る

地面に落とした指輪が
毒にならず草が芽吹く

すそをひきずって
背伸びした本読んだろう
いつでも
花の傘を回すんだよ

虫を殺しすぎたから極楽には行けないな
なんとなくで生きていたら外国に降り立つのは２日後らしい

ハチミツの瓶は
なぜかいつもいい

あつめた陶器の花瓶がいくつもあって
お墓にいっしょに行けたらいい

地面に落とした指輪の
毒が許されるあかつきには

すそをひきずって
背伸びした本読んだろう
いつでも
花の傘を回すんだよ

わたしは
虫を殺しすぎたから極楽には行けないだろう
なんとなくで生き果ててもうつくしい涙を流せるのか

シロツメクサ

白い蓮が　水辺をそよぐ
沈く片方をみつめ　世を離る

雨　風　虫のこゑ
貴方の耳に

寄せる砂が　足先を訪う
波の腕に巻かれて　安くありなむ

雨　風　鳥のこゑ
貴方と共に

鳥の背に　花の上に
あなたを訊く

u u …
u u A u A

[AI-MGRoid cover]平沢進-金星

さきがけ

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