”塀のうえ”

信号機が赤から青に変わるくらいのそんなはやさで
線路のむこう　伸びてゆく　太陽のしっぽ
いつもいつかの出来事になってしまうけれど

広くて狭い世界中のどこを探しても見つからないよ
ユーラシア大陸に　よく似た汚れの
カーテンがなびいてる傾いた窓の景色

足跡ひとつない空のした嘘なんてもうつけやしないよ
めくるめく風で　ぼやけた　空白のせなか
いまは遠くみえないけれど　かたあしのままで塀のうえ

塀のうえ

"いつも春は"

夕方六時までにどこか遠くにいこうよ
夜が近づいている場所をよこめにして
大きな橋のしたでいまは忘れたような
どうでもいいことだけいつも話していた

それが一昨日のことのよう
ほんとうにあれから何年が経っただろう

赤いとげが指にささり抜けないまま
朝が近づいてる窓でかんがえていた
小さなふたつの目のなかを泳ぎながら
ながい夢みたいですこし眠たいような

そんな毎日のことを
春がまたくるたびにただ思い出す

いつも春は

"すぐそこの遠い場所"

青いバスのって　ふたつ雲をこえ
ことしいちばん強い風が吹いたよ

あのなつかしいにおいで　
もうどうにかなりそう

目をつぶっても　みえるくらいに
なにも変わりはしない街を歩けば

あのきみに会えそうで　
でもいるはずもなくて

ことしいちばん強い風が吹いたよ

あのなつかしいにおいで
もうどうにかなりそう

あのきみに会えそうで
でもいるはずもなくて

すぐそこの遠い場所

"こっそり猫を盗む旅にでた"

これからする隠しごと　どこまで続くのだろう
羊数えても眠れないきみと　カーテンの裏に隠れて　
水槽のサカナになって　泡立つ淡い雲のなかをゆく
これまでした約束を　ひとつ残らず破って
飽きるまでずっと　心臓の音を聞いていたい
そして印を残せば　だれの声も気にならなくなった
昨日と今日があいまいになる

Hoshi

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