ボイスメモ2

こんな目で見てるそんな先見てる
金なきゃないでさそなことほっとき
畑いこかね朝露飲んでさ
いつものよにさ
トマトかじってこ
こんじきいろの雲仙拝み
気にせず飛ばすチャリみたいなラパン
あくせくみんなどこ向いてんの
土の中に行こ
パラダイスにゴー
素晴らしい世界
新しい世界
知らない記憶
近づいてくの
全部やめてさ
放り投げてさ
あの日の自由を
もう一度だけ

ラパン 作詩・作曲：坂口恭平

ドストエフスキーを読んでいるんだぜ

僕が経験したことを、書いているわけじゃないかもしれない。これはお話ではないので、僕の頭の中にあるものを、町を歩き写真に収めるように文字にしただけだ。それでもこれが目に見えているわけじゃないし、見えないのに感じると思う時、頭に浮かんでいる木の棒とか、重みを感じる気体とかはいったいどこにあるのか。でも僕はこれを作り上げたとは思わないし、パンを作ったりするみたいに練り上げてもいないような気がする。頭の中と書きながら、実際、それは体内にあるのではないし、いつも少し頭の上くらい、頭蓋骨からは外に出ていて、形は帯びていないから、外の空気に触れるとすぐに消えてしまうが、それは僕が現実の世界が、一番、正確な世界だとどこかで少しだけ思っているからだけなんだろうと思う。その言葉はいつも天気に似ていて、目には見えないのに、光の具合や肌で感じる湿りけとかいろんな感覚を日曜大工みたいに組み合わせて、そこらへんにあるものならなんでも拾ってきて、つなげる道具だって、古くなって錆びているけど、握るところは何十年も使って飴色になった木肌、丁寧にやすりで磨いた石の表面のように滑らかで柔らかい。僕はなんでもできると誇らしげに思う。そして、その瞬間はすぐに気象のように消え去り別物になる。そんな時、僕はいつも自分が生まれた直後、なぜか昨日まで苛立ち癇癪をあげていた嵐が暖かい暖炉のある部屋に入った瞬間に泣き止み、何事もなかったかのように桜の花びらが朝の光を表面に留まっている水滴越しに浴びているあの四月の朝を思い出す。あの水滴の中に見えないくらい細い光線が入り込む瞬間の、プチっという音すら記憶しているのはなぜか。頼りない光線が見た水滴の中の風景を、僕は何日でも書くことができる。それを僕は見たんだろうか。書けるんだから、見たんだと思う。何かが終わった後のような静かな自信が体の中に充満していた。僕は透明の巨大な球体の中にいて、光線に乗っているのではなく、光線そのものに目がついていて、僕は目玉を剥き出しにして、外気に触れ、水滴の中に満たされている生ぬるい液体に触れ、痛くも痒くもないどころか、よりいっそうみずみずしかった。家までの帰り道に思えたし、風景たちは物静かだったがどこか祝福してくれているような顔をしていた。

あのこえ（MAN Ver）作詩・作曲：坂口恭平

Kyohei-Sakaguchi

あのこえ（MAN Ver） 作詩・作曲：坂口恭平

Kyohei-Sakaguchi

あのこえ（MAN Ver）作詩・作曲：坂口恭平