その人魚は人を愛した。人の優しさを教えてくれたその男を愛した。しかし人魚には掟がある。『人間と深く関わってはいけない』。人魚にとって、人間は相容れない存在とされていた。これ以上共に在ることはならない。その人魚は異端者として迫害され、その男は人魚に害を為す者として、共に命を狙われることになるだろう。それは嫌だ、とその人魚は思った。だから離れる、とその人魚は決意した。
だが、その人魚にはひとつだけ心残りがあった。何も…
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