「運命のシネマ」she is thinking

落ちつかない夜に、
雪は降りはじめた。
それぞれの部屋から、
同じ景色を見る。
いつしか国道も静かになっていて、
そろそろ時間だなと僕は部屋を出る。

君がふらりとしたら、
　　見せてあげよう、運命のシネマ
ベルの音とキャンドルの光‥‥‥
　　さあ、ここが、神様の決めた世界だ。

大地に一本の樹がのびた。
それはなんと情熱的なことか。
わたしたちのそれぞれよりも強い。
僕は意志もなく、
その実をとって、
君にわたすのさ。

君がふらりとしたら、
　　見せてあげよう、運命のシネマ
ベルの音とキャンドルの光‥‥‥
　　初めてやさしく永遠となる。　

君がふらりとしたら、
　　見せてあげよう、運命のシネマ
ベルの音とキャンドルの光‥‥‥
　　さあ、ここが、神様の決めた世界だ。

運命のシネマ

「ナイトメアが明けたら」she is thinking

昨日はあまりよく眠れなかった
ナイトメアのような夢を断片的にいくつもさ
こわい映画を観た子どもの頃のこわい夜のように
部屋の物陰にひそむ何かに怯えてしまったのさ

夜が明けた　空が青く光った！
なんで今日は　あなたに会えないのだろう
今日会えたらいいのにさ
幻覚の中でも
ナイトメアの中でも
いいのにさ‥‥‥
なんで今日は　あなたに会えないのだろう
夜が明けた　空が　青く　光った

大人になればできないことも増える
ニュースを観るのが堪えきれなくなったのさ
この世の黒いところを知ると青空の下の
全部が黒いような気がしてだんだん耐えきれなくなるのさ

夜が更けた　空が黒く黙った！
そうさ明日は　あなたに会えるのだろう
明日会えたら言うからさ
身体中の愛を
街中の愛を
言うからさ‥‥‥

なんで今日は　あなたに会えないのだろう
今日会えたらいいのにさ
幻覚の中でも
ナイトメアの中でも
いいのにさ‥‥‥
そうさ明日は　あなたに会えるのだろう
夜が明けた　空が青く光った！

ナイトメアが明けたら

ナイトメアが明けたら

「オートクチュール」she is thinking

正しさをひとつ身につけた。
許せないことができたこと、
気づかなければよかったと、
気づき、また
身につけた正しさ。

美しきものに出会った。
壊れてしまうかもしれないと、
気づかなければよかったと、
気づき、また
出会う美しさ。

オートクチュールの服を着こなす君が、
ネプチューンの夢を見ている僕を、
さそう、くらい、ないと、
Showtime

ぼくの世界はあなたの世界
あなたの世界はぼくの世界
だから、
ないがしろにはできないと、
気づき、また
生まれた世界、世界、世界、世界‥‥‥

オートクチュールの服を着こなす君が、
ネプチューンの夢を見ている僕を、
さそう、くらい、ないと、
Showtime

オートクチュール

「あくる日の朝のための讃歌」she is thinking

午前９時、ぼくの知らないところで、また、
風を切り、火に立ち向かう戦士たちが、
流れ弾をかわし、
剣を振りまわし、
いつもの交差点を渡っていく。

午前９時、ぼくらよく行くカフェで、ふたり、
やわらかな光さしこむテラスに座り、
鳥たちがさえずり、
空気が流れるように、
何度も同じことをくり返し言う。

─ぼくはあなたに帰り、
　　　　あなたはぼくに帰ればいいのさ。

あなたの右側に落ちたひとつの形、
手にあててその表面を確かめるように‥‥‥

午後１時、ここでひと息つこうかと、ひとり、
虹色のよくわからないオブジェに座り、
毎週決まって来るケータリングのにおい、
いつもと変わらない景色にふと気づく。

─生きているあなたの心の底にぼくがいるから、
　　　　生きていくぼくの心の底にあなたがいてほしい。

─ぼくはあなたに帰り、
　　　　あなたはぼくに帰ればいいのさ。

午後６時、ぼくの知らないところで、また、
風を切り、火に立ち向かう戦士たちが、
レースにくるまれた花束を手にさげて、
いつもの歩道橋を帰っていく‥‥‥

あくる日の朝のための讃歌

「白い雨の日」she is thinking

むらのない白い空から
たんたんと雨が落ちてくる
いつも次のことを考えながら
生きているわたしたちの
興奮した熱をさますように
今日はとても静かだ

やわらかい影しかつくらない光が
自然も人工物も
あらゆるものの存在を
冷静に知らせている
天気予報によると
先一週間は雨のようだ

水の上をはしる車の音が
昨日よりも遅いと感じるのは
わたしがガラス窓を閉めているせいか
それともドライバーたちも
わたしとよく似たことを思っているせいか
東京は十二月並みの寒さらしい
白い雨の日

白い雨の日

「月の光」she is thinking

愛情が溢れる中で
僕は君を想う
愛だけじゃ足りないんだったっけ
月の光る中で
僕たちは完全な惑星
風と虹と海と恋
I just wanna be your final love, 
your justice, 
and your whole universe.

ああ　風に向かい手を突くから
身体は悟ります　古の掟で

同情が溢れる中で
僕は君を奪う
愛だけじゃ足りないんだったっけ
月の翳る中で
僕たちに薫った金木犀
風と夜と昼と恋
I just wanna be your final love, 
your justice, 
and your whole universe.

どうしようもないこの世の仕組み。成立ち。
きっと、この世の仕組みを決めた誰か、神様が、
少しずつ、状況に合わせて、帳尻を合わせて、
時には情も出てきてしまって、
仕組みをほんのちょっとずらすことがあるのかもしれない。
それが魔法。
まるで友人がくれたさわやかなピアノの旋律のように、
いつでも、魔法は流れている。

感情が溢れる中で
僕は君を解る
愛だけじゃ足りないんだったっけ
月が綺麗ですね
僕たちは単純な可能性
風と花と鳥と恋
I just wanna be your final love, 
your justice, 
and your whole universe.

そこに居たのはきっと幻の方へ　
消えた
初めての愛で
息をしていたの

愛情が溢れる中で
僕は君を生きる
愛だけじゃ足りないんだったね
月の光る中で
僕たちは完全な惑星
風と虹と海と恋
I just wanna be your final love, 
your justice, 
and your whole universe.

月の光

「私たちの場合は」she is thinking

あなたが私に教えたこと
確かに私を形作る
私はあなたに何を教えたの
見据える行方はどこに

変わらない街の中の
夕晴れの空の下

あの飛行機雲　白く伸びた　直線を描いた
あなたもそうあってくださいね
明日あなたが立ち止まるようなら救えないかな
やわらかい風に吹かれて私も泣くから

あなたがここから旅立つから
こうして私は手を振っている
果てしない時間に溺れそうになっても
水面がきらきら光る

あなたからもらったのは
朝焼けの美しさ

ほら飛行船が悠々と浮かぶ
空高く遠く
あなたの姿を重ねたの
私がここから祈っていても意味は無いのかな
祈りが届いたらそれは未来の愛情

抑えきれない想いがあったから
悲しくても笑えたの
数えきれない涙が嬉しいよ
あなたは何してる

あの飛行機雲　白く伸びた　直線を描いた
あなたもそうあってくださいね
明日あなたが立ち止まるようなら救えないかな
あなたを救えないのなら私も泣くから

抑えきれない想いがあったから
悲しくても笑えたの
数えきれない涙が嬉しいよ
あなたは何してる

私たちの場合は

「初恋」she is thinking

始めて長い
この魅力的なゲーム
勇気
正義
未来のことは
まだ分からないけれど
今　
君

いつから憶えてた
初めての恋
いつか心にそっと
突き刺さる

君との罪
忘れた愛
桃の香りが胸に
淡い記憶と傷
永遠に残る
泳ぎ疲れて
浮かぶベッドの上
ささやき

遥か昔に出来た
宇宙のはじまり
星　
星
たった最近
見つけられたことになる
君　
君

いつでも忘れている
初めての恋
いつか誓いにそっと
突き刺さる

花びら舞い　　　
消された愛
黙る社会は許さず
甘い記憶と傷
永遠に残る
桃の香りが
浮かぶベッドの上
微かに

いつかは誰もが
怖れていることでも
僕らはこうして
意味を見つけた
あの別れを
いつまでも

生まれた意味
生まれた愛
桃の香りが
胸に残る
記憶と傷
永遠に光る
泳ぎ疲れて
浮かぶベッドの上
ささやき

初恋

「404」she is thinking

僕のいる世界には君、君のその目には僕はいない、いない、見当たらない

404 無機質な白い壁が続いている部屋から出られない

君のいる世界には風、風のその先に僕はいない、いない、見当たらない

404 無機質な白い床の上に横たわり目を閉じていた

404 無機質な白い天井に大きな穴が開いていた

僕のいる世界には君、君のその目には空、空、高い空、どこまでも続いていく

「森の歌」she is thinking

夕べ見た月は光って消えて
次は君が光って消えて
次は記憶のページを繰って
閉じた眼が見た夢だね

決めたことは雲だね
未だ見えるが散り々々
きゅっと今の形を憶えて
深い森の物語を思い出す

むせぶほどの濃い緑
動物たちもすでに眠り
君と僕は水辺にそっと座って
交わしたかわいい約束

僕は地図を開いた
あの場所は存在するらしい
きっとあの有名な遺跡のように
永い時間のなかで物語り

旅に来た人は悟り
育つ子供たちは遊び
君がいない公園の緑道を
宇宙のつめたい風が吹く
　
夕べ見た月は光って消えて
次は君が光って消えて
次は記憶のページを繰って
閉じた眼が見た夢だ

夢が醒めたら樹脂は香る
忘れないための森の歌
夢が醒めたら違うのかな
思い出すための森の歌
夢が醒めたら船に乗り込む
忘れないための森の歌
夢が醒めたらまた会えるかな
思い出すための森の歌