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additionally composed & arranged by mooninjune69.
and also including a homage to "Impressioni Di Settembre" by Premiata Forneria Marconi 1971
mooninjune69 : electric & acoustic guitars, bass, sampling keyboards, rhythm programming & vocal.
recorded at château les cerisier, Asaka, Saitama, Japan on 7-13th August 2025.

Image photo : "Christina' s World" by Andrew Wyeth 1948


この曲をモチーフに何か作ってみようと思ったきっかけは
最近Netflixで観た「深夜食堂」というドラマの主題歌にもなっていて好きになった曲、
鈴木常吉「思ひで」がアイリッシュトラッドを下敷きにした曲なのを知ったことです。
一番有名なのは、Judy Garlandがミュージカル用に1940年に録音した
「A Pretty Girl Milking Her Cow」かも知れません。
元々はゲール語で歌われていた18世紀起源アイリッシュ・バラッドの
Cailin Deas Crúite na mBó を19世紀前半にThomas Mooreという人によって英語版が作られ、
20世紀初頭には英語圏の人々の間でよく演唱されるようになっていた曲のようです。
自分は、アイリッシュトラッドのファンで、主だったアーティストの作品は
大方聴いてきたつもりだったのにこの曲のことは知りませんでした。
さっそく自分の持っているアイリッシュトラッドの音源を
調べてみるとなんと実は1曲だけですが、
大好きなAltanが取り上げているではありませんか！
自分は何を聴いてたんだ！と恥じいることしきりです。

最近ようやくアコースティック・ギターを購入したこともあり、
最初は「思ひで」を自分でも演ってみたくてギターの音を採ることから始めたのですが、
自分なりのバンドアレンジを考えている過程で、
原曲のコード進行とは別にブリッジとなるコード進行を思いついて
まとめたのがこの音源となりました。
(原曲部分のコード進行は確認してみるとネットで見つかるものをみる限り
当てられているコード進行が違うようですがこの音源では「思ひで」を参考にしました。
Keyも自分の声域での歌いやすさを考慮して「思ひで」と同じくBmにしてあります。)


この音源を録音するにあたって、アレンジ上いくつかの実現したい切り口がありました。

・ヴォーカルは、既存のアーティストたちとは違うアプローチで歌うこと。
Altanのヴァージョンも含めてこの曲のカヴァーヴァージョンを
10例ほどサブスクで聴いて確認したのですが、
どれもコンテンポラリーなポップミュージック風に
メロディを耳障りよくアレンジして歌っているものばかりでした。
英語版が流通していた19世紀の楽譜の時点でアクの強い部分は
おそらくかなり切り捨てられていることが想像できます。
The Pretty Girl Milking Her Cow (1800s)
   • The Pretty Girl Milking Her Cow (1800s)  
勝手な想像ですが、現在に伝わる伝承歌は
元々は違う歌い方をされていたのではないかと思います。
深く検討したわけでもなく、また自分なりにではありますが、
より今の感覚でのポップミュージックとはちがう
歌が生まれた原初を想定した歌い方にしたいと考えました。
参考にしたのはVan Morrisonの歌唱です。
例えばこんな歌唱。
My Lagan Love - Van Morrison & The Chieftans
   • My Lagan Love  
予め歌うメロディをかっちりかためて歌うのではなく、
その場のフィーリングで歌うたびに違うメロディになるような
所謂フェイク・シンギングで歌入れしました。
リズムも縦をきっちり合わせずに抑揚でタイム感を点ではなく
スペースで捉えるのを意識して歌いました。
節回しはVan Morrison風の域は出てませんが・汗、
日本の民謡に似た感覚だと思います。
因みにこれがファーストテイクで、
いくつか気に入った節回しができたのでこれ以上テイクは重ねませんでした。


・原曲とは別のコード進行で印象的なリフレインが載ったブリッジを入れて
全体が既存カヴァーとは違う解釈の音源をつくること。

この音源の原曲部分のコード進行
Bm7/A6 9/G7 11/F♯m7/
Bm7/A6 9/G7 11/G7 11/
Bm7/A6 9/G7 11/F♯m7/
Bm7/A6 9/G7 11/G7 11/
D/Amadd9/Gadd9/Gadd9/
D/Amadd9/Gmaj7/Gmaj7/
D/Amadd9/Gadd9/Gadd9/
Bm7/A6 9/Gmaj7 11/Gmaj7/
※3拍子でAメロ4小節×4回で16小節、サビも4小節×4回で16小節ですが、
インスト部分では拍子は3拍子のままですが
Aメロ、サビともに3小節×4回で12小節にヴァリアント化しており、
尚且つAメロとサビの間に3/4+8/5の2小節をフックとして挟み込んだアレンジになっています。


ブリッジのコード進行
Esus4/Gadd9/Dadd9/A6/
C♯m７９11/F♯m7/Gmaj7 11/Gmaj7/
このコード進行に載せるリフレインを作っている時に、
あれ？聴いたことのあるメロディに似てるかも？と気づいたのですが、
それが70年代から活動しているイタリアのロックバンドPremiatata Forneria Marconiの
「Impressioni di Settembre」という曲のリフレインでした。
PFM - Impressioni Di Settembre Prima Versione 45 Giri (rare)
   • PFM  - Impressioni Di Settembre Prima Vers...  
この曲は1971年暮れにイタリアでリリースされた彼らのデビューシングル曲なのですが、
1974年にイギリスでリリースされた彼らのアルバム「The World Became The World」に
アルバムタイトル曲として録音し直した英語バージョンが収録されており、
日本では「甦る世界」としてシングル盤も発売された曲なのでご存知の方も多いと思います。
The World Became the World
   • The World Became the World  
同曲はキーがEmで作られた曲で、
（余談にはなりますが、同曲の1972年にリリースされたアルバム収録バージョンでは
メドレー形式の一部として収録されているからかキーはDmで演唱されています。)
リフレインのコード進行はEm/Em/D/D/A/A/Em/Em/となっていて
所謂1度/7度/4度/1度/の極シンプルな4拍子8小節のコード進行です。
この音源ではキーをEmからBmに移調して
上記の通りの微妙なコード進行の3拍子8小節に
同曲のリフレインがパラフレーズされて載った形になっていますので
聴いた印象では結構フレーズから醸し出されるアトモスフェアに違いが感じられつつ
オリジナルのメロディもしっかり想起できるのかなと思います。
しかもこのリフレインをイーリアンパイプで奏でることで
オリジナル曲でのイタリア臭さから転じて
曲全体のアイリッシュネスも強力に押し出すパートにもなっているんじゃないかなと思っています。
Premiata Forneria Marconiはミドルティーンの頃大好きなバンドでしたし、
瓢箪から駒とはこのことで、
このパートを同バンドへのオマージュと明記した上でこの音源を完成させることにしました。

また、ギターソロからオルガンソロへ繋がるパートのコード進行も原曲にはないもので
Gmaj7 9とF♯madd9が2小節ずつ延々と繰り返される構成になっていますが、
このコード進行は僕のオリジナル曲「窓辺にて」からキーを変えて流用した進行です。
窓辺にてBy The Window 20240212
   • 窓辺にてBy The Window 20240212  
（因みにこの曲はこの2つのコードの延々7分間にわたる繰り返しだけでできている曲です・汗）
種明かしです・笑

・ある程度のヴォリュームと密度をもってアウトフレーズを散りばめた
ジャジーな展開のソロパートを作り、
トラッドアレンジしたカヴァーとしては既存の類似曲の枠から
大きく逸脱した作品であることを強調したものにすること。
これは実はあまり実現できていません。
まず僕自身にジャズ演奏の素養がない（汗）ことが大きな理由ですが、
現時点でのtake3から追ってイメージ通りの演奏できる方に
ソロパートは演奏し直してもらって最終的な完成版を作りたいなと妄想しているところです。

The Pretty Girl Milking Her Cow (Cailín Deas Crúite na mBó)_take3

60-70’s Rock & Jazz, European Trad, especially British Rock & Jazz, Canterbury music, Rock In Opposition

mooninjune69

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