② 「風景」という作品は、作者自身が描いたり創り出したものではなく、置かれた鏡が映し出す風景そのものが芸術である。朝と夜、季節や天気、建物の明かり、全ての生き物の動き、これらは日々移り変わるものであり、私達が見ている風景に同じものはひとつもない。リリ・デュジュリーは、他の作品「海辺の日曜」でも、10時から22時までの1週間の海辺の様子の映像が計7つ映し出されている。静と動、光と闇をの変化の様子を芸術とした作品である。「風景」も、日々移ろう日常の変化の様子を芸術とした作品である。鏡を置く場所によって変わる作品。
③ 目を瞑っても想像できる作品に導きたい。まず細かく自分が見える風景の様子を語る。そして、自分で春夏秋冬、梅雨、雪、など季節の移ろいと人々の動きを想像しながら、相手にその変化の過程を想像しやすいように細かく語る。テーマとしては、現実と空想と現実の順番で聞き手を旅行させる。最後は自分の暮らしを風景と絡めながら語り、聞き手にも問いかける。

的場小雪 デュジュリー『風景』

2 コンセプトは聴き手の想像力を掻き立てる手助けとなるような、主観的な想像力を通して作品を味わうことの楽しさ感じる様に導く音声ガイドです。狙いとしては、1人で鑑賞している人でも誰かと話しながら鑑賞し、感想や自分の思ったことを心の中で共有できる楽しさを味わえることです。
私たち見る側は、何かしら作家たちの意図したメッセージを必ずしも作品から読み取らなければならないという義務はないと思っています。また作品の作者の生い立ちや環境だけではなく、見る側の人々それぞれの生い立ちや、今現在置かれている環境、今の気分や気持ちによって、同じ作品でも見えてくるものや感じるものは全く違います。ならいっそのこと、自分の価値観や考え方を通して作品を見て、その作品に対して、作者の意図や題名など関係なく自分の想像力だけで楽しんでいいのではないかと思いました。むしろその想像力を大事にすることもまた重要だと思っています。
3.工夫した点は、話し方です。タメ口や相槌をうち、知らない人だけれども親近感が得られるような、友達と話している感覚になれるような話し方を意識しました。また最後のセリフは、ガイドが終わっても、聴き手の想像力をやめないでという思いを込めて言ってみました。

森田麻里帆 まな板の上の肉  アンナ・ベラ・ガイゲル

２”作品の世界観への没入を促すガイド”
今までの授業を踏まえた上で今週改めてアナザーエナジー展を鑑賞しに行った際に一際目を引かれた上に、作品の解説と合わせて鑑賞した際に心に訴えかけてくるような力を感じ、作品の持つメッセージ性や重量感に魅了された本作品を対象作品に選びました。自分自身一目見ただけで底知れぬ恐怖感と悲劇を彷彿とさせられたこの“美しいブルー”という作品を、“キャッチーさ”や“ポップさ”を抜いた“シリアスさ”に全振りして作成しました。作品の解説に「本作品は2015年のシリア難民をはじめとする欧州難民危機に応答した作品の一つである」と記されており、自身がユダヤ人であり様々な社会問題に強い意識を感じてきたミリアム・カーンのバックグラウンドや思い、エネルギーが込められた作品であると感じたため、カーン自身の生い立ちや作品に込められた社会問題を踏まえた上であえて客観的な説明などを抜き、音からシリアスかつミステリアスで、悲しいのにどこか美しく儚い雰囲気を感じられるような音声ガイドにしました。
３作品から受けた印象と物語性を象徴するような音楽をフリー音源などを組み合わせて作成し、作品の鑑賞をより豊かに出来るような、作品の世界観にのめり込めるような時間にしたいと思い作成しました。また、沈んでゆく二人の心の声のようなセリフを自分の声で入れさせていただきました。作品から受ける印象やメッセージ性がこんなにも悲劇的なのに題名が「“美しい”ブルー」であるという点に若干のアイロニーを感じたので、最後のセリフには皮肉をきかせてみました。

石井詩央莉 美しいブルー ミリアム・カーン

2【緩と急】一言でテーマを表すなら緩急です。センガ・ネングディの作品はパフォーマンスという動きを静物へ落とし込んだ作品が代表で挙げられます。つまり、それらの作品には視覚的な制限があります。元は動いているはずのものを固めているのです。私は、音声ガイドは『補う』ことを主な目的に据えていると考えます。視覚情報で制限されている「動き」「緩急」を聴覚から補うことが、作品をより深く知るためには必要なのではないでしょうか。視覚で引いた分をどのように足すべきなのか、耳から得る動きに注目して作成したいと考えます。
3
⑴出来るだけ言葉を使わない
⑵音の動きに注目する
⑶自分なりに作品のイメージづけをする
箇条書きであげると以上のような手法を用いようと思います。緩急を与えるために、言語は必要かを考えたところ、私の中では必須ではありませんでした。音の並びのスピードに重点が置かれると思います。「実際に踊ったりホールでの音源や、引っ張られる印象のある音などを使って、目の不自由な人が音でこの作品を想起できる」ものにすることを考えました。作品解釈は、人の数だけあるため、客観的情報には重きを置かず、私は私の解釈を表現し、自分なりに作品を補おうと思っています。

瀬川千聡 パフォーマンス・ピース センガ・ネングディ

Fragile Heart

橋本ひかる 「黒い芥子」宮本和子

②コンセプトは「もしも美術館の展示品に触れることができたら」です。
美術館でこの作品を観ていたとき、たまたま近くにいた小さな男の子が、この作品を触ろうとしてお母さんに怒られていました。それを見て作品を実際に触る体験ができたら楽しそうだと思いこのガイドを思いつきました。本物のようで本物ではない、そんな不思議な感覚を味わってもらうための音声ガイドです。
③工夫した点
鑑賞者にできるだけ寄り添うことを意識して作りました。この作品を初めて観た人は、素材ではなく見た目のインパクトに注目するかなと思い、見た目の説明から始めました。その際にビリビリ、フニャフニャ、ベコベコなどの言葉を使うことで本物のダンボールや空き缶をイメージしてもらうことを狙っています。最後は陶でできていることをリアルに感じてもらうため、陶器の割れる音を入れました。

松崎春花 21-G

２、作品の客観的情報を伝えつつも、あらゆる作品鑑賞の仕方があっていいんだと感じてもらえるるよう音声ガイドを目指す。
まずは、シンプルと複雑さが両立する洗練された作品を、「釘と糸のふたつの円のようなもの」というありのままを感じてもらい、そこから、作品を正面から見た時のシンプルさと、少し角度を変え、斜め横から見た時の見え方の違いを楽しめ、鑑賞者がその中へ入っていけるようにしたい。
一つ一つの釘を人のように捉え、糸をその人と人とをつなぐ縁を可視化させた線と考えることで作品の世界観が急に自分ごとに感じられるような音声ガイドを制作する。
３、
①客観的情報と、主観的情報で口調を変える
→客観的情報の時は淡々とした口調で話す。また、ひとつひとつの釘や糸の距離感を密集しているところでは単語を多めに入ることで伝わりやすくしたい。
→主観的情報は、誰かと話しているような、あくまでも思考を強制させない程度に柔らかな口調を心がける
②オノマトペを効果的に活用する
→釘や糸の様子をオノマトペによってよりイメージしやすくする
③単語を並べることで、無機質な作品の雰囲気を伝える

幸喜彩花  無題 宮本和子

２.「思考を含む動作をガイドするガイド」

この作品はインスタレーション＝空間作品のため、音声を通じて観客の視線や動作をガイドする。まず地図を見てもらい、次に絵画を見てもらい、そしてドローイングを見るように視線をハックする。この間に「回れ、右」と呼びかけることによって、観客は強制的に他の観客と同様の動きを取ることになる。最後の一言で思考にも介入するが、あくまでも提案である。この提案に乗るか乗らないかは観客に委ねる。また、今回は動作を誘導するのみで、作品そのものの解釈などは観客の自由である（作品のテーマが他作品と比べて親しみのあるものだと考えられるため）

３.狙いは観客がみな同じ動作をすること。せっかく他人と同じ作品を見ているのならば、それ特有の体験があると面白いのではないか、という発想を中心にガイドの構成を考えた。さまざまな背景を持つ来場者の全員が地図の前で「回れ、右」をすることで、その空間に妙な一体感が生まれるのではないか。情報量の多い作品ではあるが、解説やドローイングで紹介されているため、ガイドでの紹介は「明治期日本」にとどめた。

中村歩 シルクロード アンナ・ボギギアン

2.「End」という作品自体が鑑賞者に何か語り掛けているような、そんなミステリアスな雰囲気をコンセプトとした音声ガイドです。作品の概要について最初から語られることは無く、目に見える情報ばかりをただただ単調に述べることで、なんとなく作品自体が自分自身に何かを訴えかけているような、そんなシチュエーションを鑑賞者に感じさせることを意識しました。また、この音声ガイドを聞くことにより、より「End」という作品に対するイメージが迷走してしまうような、そんな音声ガイドに作り上げました。
3.音声ガイドの内容を大きく２つに分けました。
１つ目は、鑑賞者が作品に抱くイメージをより膨らませるためのパートです。ここでは私自身の感情があまり入らないよう、「である調」の言葉遣いで、なるべく単調に読み上げました。ここでは、鑑賞者自身がこの作品に対するイメージを作り上げる為の時間としています。
２つ目は、この作品における背景や、作者について語るパートです。ここでは、１パート目の鑑賞者が想像をする時間とは違い、この作品についての内容を知ることを目的としました。そのため、「ですます調」の言葉遣いで、なるべく語り口調となるよう読み上げました。そうすることで、鑑賞者が作品の内容について素早く吸収できると考えました。

高野ひなた 宮本和子／End

作者の三島喜美代さんがおっしゃっていた、「一生懸命ゴミを作っている」という言葉を聞いてからは、自分自身が「美術館にある作品」というフィルターを取り除かれたような感覚で作品を見ることが出来たと感じました。音声ガイドでも、美術を聞くという感覚ではなく、何か自由な想像力を働かせられるようなガイドをつけたいと思います。特にフォーカスしたい作品は、無数に空き缶の入ったゴミ箱の作品です。

３
狙いは、聞く人に色々な感想を抱いてもらうことです。実際に私が初めて見た時、中に入っているひとつひとつの空き缶を眺めているだけで、その飲み物を飲んだり見たりした時の記憶がいくつか頭に浮かび、そのひとつずつが集まってひとつの作品になっていると感じました。また、その作品を一つのまとまりとしてみると、何かレトロな雑貨屋さんにありそうなデザインだなとも感じました。このように、ひとつのゴミ箱から色々な感想が出てきた体験を音声ガイドでも近いものが体験できるように、客観的な情報と主観的な思い出を交互に織り交ぜ、その間に無言の時間も時折入れていくことで、聞いている人にも各々の考えを巡らせてもらいたいです。

kimura satoru