tales to astonish

Tales to Astonish (BKS)

miss u

HISAME　Keyed

一人見る雨空　新宿の雑踏
他人の傘に紛れ何故か気分も安堵
人混みは確かに嫌いだった筈なんだけど
不思議と思う　煙で人工呼吸
気道に入り詰まっていく排気ガス
息できぬまま走り出す
遠い昔が横を通りすがり
でも見て見ぬふりが妙に上手い

今日もまた一人　吐くほど甘いコーヒー
で言葉流し込み 映る景色はバカに遠い
空っぽの自分を汚く　飾り通し
見よう見まね　　周りのように

ふらついた足取り　で動き回るあちこち
あてなんか無いのに 
最後に もう一度見たい景色がどこかにある気がして よくわからないまま 気持ちは急ぎ


あの宝物は傷だらけだったけど
遠くから見たら　酷く綺麗だった
覚えてないけど 今じゃ あの傷に触れてみたいと何となく思ってる

影は消え 何もかも白黒だった
あの色は既に記憶の彼方
守りたいと思えるような荷物もなかった
いつかにどうしても帰りたかった

※もう　あんたはいねえ　なんか　頭痛え
　抗って　逆らって　戦っては　また吐いて
　
　とっくにわかってる　バカなんだって
　息は切れかけ　でも　生きてたくて

　バカだってバカなりに証明したくて
　他でもない自分が自分でここに居るって

※解けた靴紐が雨に濡れ絡まって
　それを結び直そうとして　手が汚れて

　不意に諦め 掃き溜めに唾を吐きかけ
　昔 描いた絵が外れない足枷
　
　湿ったアスファルトに優しく包まれて
　握ったはずのあの手　通り抜ける隙間風

今思うと変わりたかった
他に縋れる物を探したかった
代わりがあるかなんて思って無かったけど
代わりが効くのは自分自身だった
誰々と掛替えのある自分を変えたくて
剥げかけのスタートラインへと目掛け 息も絶え絶え
雨はまだ降ってるけど 止むのを待つのはやめた
安いビニール傘と共に己を投げ出して


もうあんたはいねえ わかってるって
それでもここに居続ける 自分の存在を歌う
何かの付録なんて クソ喰らえ
また捨てきれない今日をただ生きる

merry rabbit

煎餅のエッセイ集