Risk

欠片は揃ったはずなのに
嵌めこむことないまま時だけ流れた
駅 雑踏 無意識の群れ
捉えようのない人熱
何処へも続かない改札口を抜けて
    　
真昼に浮かぶ星を探した
透明になって街を見ていた
不確かなことばかりだぜ
暮らしがハートを秤にかける

人目を引かず年老いた花
遠い未来との邂逅のようだ
不確かなことばかりだぜ
塞いだ過去と和解は無い

口をつく筈の言葉 機を逃して
求めないことだけ求めた成れの果て
残響のような思いに身を任せては
未だこのリスクは取れない
未だこのリスクは取れない

活路を描いては消して
擦り減ったキャンバスが空洞のように見えた
浮動層 日和見は誰
希望の発露も冷笑の糧 
夜も昼もない地下に続く路抜けて

真夏に揺れた陽炎が
朦朧なオアシスが見えるか
不確かなこと測りかね
眩んだ目へと委ねた果て

とうに昔 見落としていた
信号探し彷徨うフローター
不確かなこと測りかね
濡らした頬にも灯りあれ

過ぎるだけの時に苛立ち隠して
風の噂 不詳なのに身につまされて
焦燥のサイレンは背をなぞるように
未だこのリスクは取れない
未だこのリスクは取れない　

今更の台詞が喉元で絶えて
誰も知ることが無くなった岐路の果て
残響のような人生を生きていくのか
もうこのリスクは取れない
もうこのリスクは取れないんだ　

Risk

葦

墓標の側で語った栄誉じゃ温もりは戻らない
当然の摂理さ それを確かめる言葉はもう要らない
　
快哉叫んだあの瞬間に
追憶のその果てで逢えたとして
セピア色の生活に 還るレール
避けて通れやしないのに
 
一度だけだなんて何度も願ってみせて
それなら 眼前の万象も意味なんてないでしょう
浮世だなんて言って儚んだその後で
今更 変わると思っていない
肺胞満たす後悔 斜陽の中一人きり

病床とアイロニー
恙無い日々 秤にかけた罰だろう
分かっているさ
これから少し歩くことになると

寂しさよ 肝胆相照らしたところで
楔を打ったような間は消えない
冬に積もり春に溶け
そんな哀しみならば厭わないのに
　
こう在りたいだなんてだけで埋め尽くして
それなら 光明が差す間も無くたって当然でしょう
火種消えて尚 存えたその後の情けで
初めからなんて無い
陽光暮れつ狼狽 もうどうしようもない此処で一人

床に倒れた椅子の音 
乾いた響き耳から離れない
タイトロープを編んで差し出すのは
不足も満足も無い 生活の連綿
錆び付いたカーテンレール越しに流れ込む喧騒は 
誰のものでもない そこに自分は居ない

一度だけだなんて何度も願ってみせて
とっくに岐路は過ぎたと理解していた筈なのに
浮世だなんて言って儚んだその後で
何も選ばずにきた小さな存在だけが残る

暮れる日を背に葦が漂ってみせて
それだけ 確信なんてもう一つさえ無く
肩も落とさず諦めることだけに
慣れきった背を流すトワイライト
肺胞満たす後悔 斜陽の中一人きり
解なんて存在しない
陽光暮れつ狼狽 もうどうしようもない此処で一人

葦/Sapience

Blue Hour

誰に何を言われたってさ 気にしないで 
遮られるくらいが日常の理
アクセル緩められないまま
そんな時代に生まれ疲弊したって理由を探す
 
掬い上げては零れ落ちて
流れる時間ととても釣り合わないものだけ
溢れかえってしまった部屋に
差し込む光は空きトランクの頬を照らしている
 
モルグの壁のような生活の只中
それでも言えない本音や
瞼の裏側で映し出した灯が
消えてしまわないように

不安や躊躇いが無い日なんてこの先
数える程しか無いだろうけれど
闇を確かめるように残した足跡辿れば
同じ場所へ還れるだろうか
 　
蛇口濡らす水はやけに 冷たくなり
此処で過ぎた季節を確かめる
寝巻のまま駆け出せそうな
そんな朝はもう二度と来ないとしたって夜は明ける
 
ありきたりの土曜は ひとりでに変わらないさ
そんなの分かってはいるけれど
ただ続く日常に 花を捧ぐとして 君以外ないだろう

迸る血潮や滴る汗のように
真っ直ぐではいられなくなってしまっても
とうに色褪せた 同じ傷を創った過去に
救われたりして凌いでいこうか

明け方 街が水槽に沈んだ刹那
瞳の奥底まで浸せば
深い闇の淵まで光が渡されて 
そんな朝がいくつ巡っただろう

生きづらいところで蹲って 途方に暮れて
見失ってしまったとしても
いつか遠ざけた夢や希望に死に場所は無く
隣で寝息立てて

不安や躊躇いが無い日なんてこの先
数える程しか無いだろうけれど
闇を確かめるように残した足跡辿れば
同じ場所へ還れるだろうさ

Blue Hour

前夜

夜道照らすコンビニは
波止場のようだな 銘々に
交差点には回送バスさえいない
通知のない片手にもう
気を配るのを止めて久しい
 
見慣れた街にある風景の周縁に立って
戻らない言葉や 交わした約束を
一つ一つ思い返すけど
次の角を曲がる頃にはもう
また違うこと考えて　
 
独りきり路地裏を歩けば 
星の光アスファルトで果てた 
それを拾うように 確かめるように 歩は進む
走馬灯を潜り抜けるように
筆も走らせずに認めるように
この街で受け取った 躊躇いも安らぎも今
夜風の中

境内の自販機で買った
缶コーヒーまだ飲みきれないまま
偶に行くカフェ 端の席
自ずと紡いでいた冴えぬレイトショー
　
終演に至って
孵らない希望や 後を引く悔いも
閉ざしたエピソードになるように
次の街の地を踏む頃にはもう
とうに過去のものになる現在地
 
解けた空越しの天体の 降り注ぐ合間を歩く夜半
さながら雨のプール 解像度は言葉も超えて
寂れた色調で塗るのは 虹彩か海馬かなどは問わない
この街で受け取った 躊躇いも安らぎも
未来に立ち現れる それとは違うけれど
生まれて死ぬまでに鳴ったエチュード


前夜/Prologue

片道切符

改札越しのさよならに
どことなく不満を見せて
誰一人いないコンコース端
絆されたように目配せて 
 
車窓の向こう 見慣れた街　
馴染みのビートに揺られて
変わり映えの無い生活が結わえる
数両編成の容器を
　
大人になったとして尚
また切符に皺をつけて
伽藍堂のままのコンコース端
真昼の熱に浮かされて

次の街へと逸る心も
車輪の下へ忍ばせて
変わり映えの無い生活が所謂
興ざめの減速灯
  
最後の声は届かない
秒針絶えず空を切っていく
心の奥底しまって
遠い思い出にしかなれやしないの

紋切り型のラストチェイスシーン
車窓越しの君と僕 遠く
往年の由縁を切って
さよならだけの人生 その1ページ　

諧謔無き凡庸な日々　
項垂れる間に近づいて
終わりを待つだけのアンニュイ
そろそろ靴紐緩めて

行こうか そうさ
きっと映画みたいな結末じゃないが
日々を定義した路に脱輪仕掛けて

遠くの街へといこうぜ
とりとめの無いことだけ浮かべて
終電前の秒を読んで
摩耗するだけの日々とお別れだ

虚栄に満ちたスピード感で
転がるように辿り着く先が
名も聞かぬ駅だってオールライト　
エンドロールに似合わない この1ページ
　
青い春 淡い夏 遠くなったり
塞ぐ日々への回答は逃避行
生活を切り取ってアンロードアンドロード
街を縫うように解くように

So Far

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