セントエルモ

セントエルモ

藤田悠平

消えかけの讃美歌は 地鳴りのように錆び付きながら
幸せの残骸に導かれて微かに聴こえていた
あなたの呟いた 祈りのように柔らかな声が
穏やかにもどこか目に涙を浮かべていた

今何もかも吐き出せないままで
まだ止まない痛みに苛まれているのなら
どんなふたりも全てが正しく
朝日は優しくただ慈悲深い許しを

今は何も言わないままでもいい
声を揺らしてただ手を繋ごう
いつかセントエルモが現れるさ
伸ばされた手は暖かく
灰色のまま色付いて

指の先…

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