鉄道 ZONE4

Scarlet Kakogawa

Remaster：ORIENTAL KAGA - KASAMA

「関空まで乗せたるから日本から出てけ」

その言葉は、突然だった。

「え？今なんて？」と、俺は思わず聞き返した。

運転席に座る叔父は、ハンドルを握りしめたまま、視線を前に向けたままだ。車内には、何かとがった空気が漂っている。信号が赤に変わると、彼は一瞬、俺の方を見た。

「お前に言うてんねん。関空まで乗せたるわ。そっから先は自分で考えろ。」

いつも冗談ばかり言っている叔父の口から出たその言葉は、どう考えても冗談に聞こえない。冗談なら、いつもみたいにニヤリと笑うはずだ。しかし、今の彼の表情は笑っていない。それどころか、今にも爆発しそうな怒りがその瞳の奥に渦巻いている。

「なんで急にそんなこと…？」俺は混乱していた。何が原因なのか全くわからなかった。

叔父はため息をつき、車を路肩に止めた。そして、振り返って俺を睨みつけた。

「お前、わかっとらんのか？この国にお前の居場所なんて、もうないんや。」

突然の言葉に、心臓がドキリとした。俺の居場所がない？何を言ってるんだ？俺はここで生まれて育って、友達もいるし、家族もいる。なのに、なぜ叔父はそんなことを言うのか？

「どういう意味？俺、なんか悪いことした？」

「そういう問題ちゃうねん」と、叔父は語気を強めた。「お前がこのままここにおったら、何も変わらん。お前自身も、この国も。お前は自分の力を知らんまま、腐っていくんや。」

力？何の話をしているのか全く理解できない。しかし、叔父の真剣な表情が、その言葉が単なる怒りや不満から出たものではないことを示していた。

「お前には、外に出て、自分で自分を試す必要がある。それができへんかったら、一生ここで小さくまとまってしまう。」

俺は黙り込んだ。叔父の言葉には、何か大きな意味が隠されている気がした。けれども、それが何なのかを掴むことができない。俺の頭は、ただ混乱したままだった。

「でも、どこに行けって言うんだよ？俺、そんなに大した人間じゃないし…」

「だから行け言うてるんや！」叔父は声を荒げた。「お前が大した人間かどうかなんて、ここにおったら一生わからんままや。外に出て、世界を見てこい。日本の外で、いろんなもんを見て、感じて、自分が何者か確かめてこい。それができたら、また戻ってきたらええ。」

叔父の言葉に、胸の奥がざわざわし始めた。怖さと期待とが入り混じった、言いようのない感情が俺の中で膨らんでいく。

「…本気で、そう思ってる？」

「ああ、本気や。関空までやるから、後は自分で決めろ。」

俺は窓の外を見た。大阪の街並みが、今までと違って見える。少し前まで俺にとって当たり前だったこの景色が、急に手の届かないものに思えてくる。日本から出るなんて考えたこともなかった。でも、今ならできるかもしれない。いや、やらなきゃならないのかもしれない。

「…わかった。行くよ、関空まで。」

俺がそう答えると、叔父は再びエンジンをかけた。車はゆっくりと走り出し、やがて高速に乗った。

日本の外に何が待っているのか、まだわからない。でも、今はそれでいい。少なくとも、俺は一歩を踏み出したんだ。

車の窓から、少しずつ遠ざかる大阪の街を見つめながら、俺は静かに決意を固めていった。

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素材は和爾さんからお借りしました

YOUKAI SHIN-YOKOHAMA

蒲園