葦

墓標の側で語った栄誉じゃ温もりは戻らない
当然の摂理さ それを確かめる言葉はもう要らない
　
快哉叫んだあの瞬間に
追憶のその果てで逢えたとして
セピア色の生活に 還るレール
避けて通れやしないのに
 
一度だけだなんて何度も願ってみせて
それなら 眼前の万象も意味なんてないでしょう
浮世だなんて言って儚んだその後で
今更 変わると思っていない
肺胞満たす後悔 斜陽の中一人きり

病床とアイロニー
恙無い日々 秤にかけた罰だろう
分かっているさ
これから少し歩くことになると

寂しさよ 肝胆相照らしたところで
楔を打ったような間は消えない
冬に積もり春に溶け
そんな哀しみならば厭わないのに
　
こう在りたいだなんてだけで埋め尽くして
それなら 光明が差す間も無くたって当然でしょう
火種消えて尚 存えたその後の情けで
初めからなんて無い
陽光暮れつ狼狽 もうどうしようもない此処で一人

床に倒れた椅子の音 
乾いた響き耳から離れない
タイトロープを編んで差し出すのは
不足も満足も無い 生活の連綿
錆び付いたカーテンレール越しに流れ込む喧騒は 
誰のものでもない そこに自分は居ない

一度だけだなんて何度も願ってみせて
とっくに岐路は過ぎたと理解していた筈なのに
浮世だなんて言って儚んだその後で
何も選ばずにきた小さな存在だけが残る

暮れる日を背に葦が漂ってみせて
それだけ 確信なんてもう一つさえ無く
肩も落とさず諦めることだけに
慣れきった背を流すトワイライト
肺胞満たす後悔 斜陽の中一人きり
解なんて存在しない
陽光暮れつ狼狽 もうどうしようもない此処で一人

葦/Sapience

So Far