血が流れていた。
体内じゃなく路地裏の
地面を真っ赤に染めていた
どうやら僕は殺されたらしい
刺さったままナイフを眺めていた

死んだことで得た力
一度だけ誰かを呪い殺せる
微かに残る死に際に見た
知らないあいつの必死な顔を

僕には何があったんだっけ
何か予定があっただろうか
大切な人はいたんだろうか
何も思い出せないくせに

死ねないままで死んだ僕の
怒りは理由を持つのだろうか
殺されたことはどうでもいい？
正体不明な回路が僕を彷徨わせんだ

人目につかなくなって気づいた
いや、本当は知っていたはずだ
この世の中は死因であふれている！
陽と陰が僕を刺したように

帰るべき場所が分からないのは
端からなかったから
涙とかいう“生きる”の象徴は多分
もう僕には残っていないんだろうから

死ねないままで死んだ僕の
悲しみは意味を持つだろうか
目の前にいるあいつは似ている
僕を殺したあの人影に

今ならあいつを呪えるぞ
同じ目に合わせてやる
孤独の中、声を震わせて
怯えた声を聞いてやる

呪ってやろうとしたらいつの間にか
あいつの家に着いてしまった
無邪気な声が聞こえて
急に人間の顔が分からなくなった

僕は去った　よく分からなかった
僕はさった　何もできなかった
僕は悟った　どうでも良くなった
感情が消えていくようだ

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