いつもの悪い癖で
何度も書いては消した指先が
あと何センチ先に届いたなら
良かっただろう

「生きることは間違うこと」
そんなわかりきった慰めの言葉
重い十字架と長い償いの
助けにもならない

ひどく胸の痛む夜を
騙し騙しやり過ごしていく
明日に躓いても　傷ついても
命は続くから


季節は淡々と流れても
来た道はずっとでこぼこ
ずいぶん先を歩く人を見ては
足を止める

「周回遅れでもいい」と
励ます声を信じて裏切られて
期待に沿えない　希望に満たない
惨めな自分を噛み締める


強い嵐の来る音に
怯え一人で毛布を被る
夜が明け晴れていれば
きっと外の空気は澄んでいる

ひどく胸の痛む夜を
騙し騙しやり過ごしていく
明日に躓いても　傷ついても
命は続くから


悲しくて涙が止まらない時も
後悔ばかりの日も
何かにまた繋がる

夜を抜けて

ペガサス　ペガサス
一番好きな馬
翼広げて飛んでゆく
伝説の馬

ペガサスの背中に乗り
空を飛びたい
馬の背中に
乗ったことはないけど

ねえ　ペガサス
ロマンあるでしょう
やっぱり　そう
一番好きな馬

ペガサスが好き

怖い夢を見て飛び起きた
外が白む静かな世界
汗ばむ掌が掴んだ
夢の欠片　そっと見てみる

いつも同じところで終わる
よく知っているはずの結末へ
辿り着くのが怖くて
魘されては目を覚ます

心のどこかに隠している
小さく大きな不安
そこから知らない間に住み着いていた
か弱く根強く脅かすもの
遠ざけてもまだそこで待っている
思い出すのを待っている
心の隙間でじっと佇んで
私を見つめているもの


怖い夢のさなかに立って
これは嘘と唱える頭
それでも裏腹に震えて
すくむ足に涙がひとつ

きっと馬鹿らしいと笑って
取り合われないような物語
信じてなどいなくても
何度だって繰り返す

世界が終わってゆく日の夢
明日が途絶えてしまう日の夢
その日は不思議と穏やかなまま
絵本のページを閉じるみたいで
ふと目を閉じたらそれで最後だと
なぜだか思えてしまって
瞬きひとつもしてはいけないと
恐れて朝日を迎える


眩しい空気に晴れる空も
炎が滲んだ夕日も
遠くで絵具がゆらめく水平線も
街並み縁取り連なる山も
6時のチャイムが響く公園も
欠ける月を待つ子供も
全てが二度とは戻らないことに
私の心が怯える

夢でよかったと笑いたい


世界が終わる夢

眠れない深夜1時に
ラジオをつけると
イヤホンから聞こえてくる声は

喧嘩別れした
昔の友達から
教えてもらった温かい声

しつこいほど耳につく
鼓動が問う
千の涙を拭うもの
その答えを

ああ　瞼の裏の記憶が色褪せても
心の中のフィルムは鮮やかで
取り出したくない映像でも
いつだって同じ昔が蘇る


耳鳴りのノイズばかりが
塗り潰した
思考の終わりはいつも
渦の中へ

この感情にも
名前があるのならば
憎しみか　あるいは
妬みと呼ぶか

呆れるほど　足踏みが
得意になり
傷を塞いだふりをして
笑っている

ああ　夜を忘れた
部屋の明かりの下で
膝を抱えたまま
息を止めても
酸素を求めて苦しくなり
生きていることを思い出してしまう


ああ　昨日が今日に変わって
日々は続く
どれほどの思いも
振り切ってゆく
重いカーテンの隙間に見た
縹色の空が朝を呼んでいる

更ける夜

自主制作CD「はじめてのひきがたり」に収録したバージョンです。ピアノとドラムと歌です。


歌詞

眠れない深夜1時に
ラジオをつけると
イヤホンから聞こえてくる声は

喧嘩別れした
昔の友達から
教えてもらった温かい声

しつこいほど耳につく
鼓動が問う
千の涙を拭うもの
その答えを

ああ　瞼の裏の記憶が色褪せても
心の中のフィルムは鮮やかで
取り出したくない映像でも
いつだって同じ昔が蘇る


耳鳴りのノイズばかりが
塗り潰した
思考の終わりはいつも
渦の中へ

この感情にも
名前があるのならば
憎しみか　あるいは
妬みと呼ぶか

呆れるほど　足踏みが
得意になり
傷を塞いだふりをして
笑っている

ああ　夜を忘れた
部屋の明かりの下で
膝を抱えたまま
息を止めても
酸素を求めて苦しくなり
生きていることを思い出してしまう


ああ　昨日が今日に変わって
日々は続く
どれほどの思いも
振り切ってゆく
重いカーテンの隙間に見た
縹色の空が朝を呼んでいる

更ける夜（はじめてのひきがたり収録）

なぜだろう
砂に指で描いた落書きのように
消えてしまう
泣きながら
「忘れないよ」と言った
あの日の心の痛みが

いつも私達　そうして
忘れたくないことばかり
忘れていくの

生きるというのは
塗り替えること
喜びも　涙も
新しく変わる
大切なことは　目の前にある
今を生きる私だけが掴める


「いつまでも泣いてばかりいると
幸せが逃げてしまうよ」と言う
あなたの少し呆れた声が
記憶の底に蘇る

ずっと私達　走って
目にしたくない景色を
振り切ってきたの

生きるというのは
傷つけること
傷つけて　傷ついて
また前に進む
今は蕾の花が咲いたら
私の心も少し晴れるだろう


きっと私達　いつでも
痛みを思い出にして
心を守るの

生きるというのに
正解はない
間違えて　迷って
何度も繰り返す
未来を生きる代わりはいない
ゴールは私のこの目に開ける

命の途中

真夜中1時　目的はなく
国道12号線走る
街灯もなくヘッドライトが
街のない道照らして走る

行き先まではあと1時間
カーラジオから流されるのは
名前も知らぬ歌手が歌った
聞いたことない歌ばっかりで

ここには
僕の知ってる世界はなくて
向こうに
僕を待ってる世界もなくて

真夜中の2時　まっすぐ走る
コンビニぽつり明かりをつけて
街が近づく気配を告げる
眠った街の眠らない店

バイパス抜けて廃スタンドを
横目でちらり通り過ぎたら
国道12号線走る
暗夜行路が終わりを告げる

どうして
ここまで来たか誰も知らない
僕さえ
どうしてなのかわからないんだ

こころが
砕け散る時どんな気持ちか
知ってる
知らないほうが幸せなのに

暗夜行路

自分が自分であることを
疑うことがあるだろうか
自分が今生きている事実が
揺らいだことがあるだろうか

みんな誰かの中に居場所が欲しくて
そうでしょ？　だって
見ないふり聞こえないふり知らないふり
悲しくないの？

名前を呼んでこっちを向いて話して
ここにいるって確かめたい
たった一人でいい　それだけ
そう思うほどつらくなる


もしもの話をしてみては
ただの夢だと笑っている
まわりがみんなうらやましくて
自分が嫌になることもある

昔に戻って正しい選択肢を
選びたいけど
どの道を歩むのが正しかったのか
見えてはこない

間違ってて偏ってて歪なのは
誰も答えを知らないから
怖くて心許ないけど
手に取れるのはひとつだけ


何の罪があって
うまくいかないのか
何を恨めばいい
何を嘆けばいい

名前を呼んでこっちを向いて話して
心の隅に置いてほしい
たった一人でいい　お願い
ここにいること　気がついて

できそこないのうた

時間とは揺蕩う泡のよう
掴みたくても手に入らない
ただ通り過ぎるのを見てるだけ
それでいいの　それでいいの


雑踏　前だけ見て歩く
景色の一部になり果てて
オートメーションの毎日に
命を無駄遣いしている

人生は一度きりの勝負
口に出すだけなら容易くて
ただ通り過ぎるのを見てるだけ
それでいいの　それでいいの


傷つき疲れた魂に
そっと包帯を巻いてやる
それだけのことができなくて
命を削り続けている

意識とは彷徨う糸のよう
たぐってもふわりとすり抜ける
ただ通り過ぎるのを見てるだけ
それでいいの　それでいいの


硝子でできた壊れ物たちに
触れるのも躊躇うほど
扱い方がわからないまま
生きていていいのかな

花が咲き散ってはまた咲いて
命とは巡り継がれるもの
ただ通り過ぎるのを見てるだけ
それもいいさ　それもいいさ

通過する生

あれから　何年が
経ったか覚えてる？
紫の花束を
携えて今日もまた来たんだよ

まぶしい光が空から
梯子をかけてはいるけど
そこから誰が下りて来るでも
ないと知っている

ひとりぼっち　置いて行かれ
泣いても
背中さえも見えなくなっても
心の中には変わらず留めて
おくことができるから


記憶の亡骸を
大切に抱えて
一日も離さない
たとえ身が　ぼろぼろに　ほどけても

土の上を歩き回り
何度も迷子になっては
昔の自分が残してきた
手掛かりを探る

今日と同じ明日が来ても
本当は
ほんの少し違っているって
教えてもらって初めて気付いた
あの時を思い出す


手を離した日に誓った
大層でもない約束
私は未だに守っている
笑うだろうけど

瞼閉じて浮かぶ顔は
いつしか
知らず知らず　塗り替えられてく
そうして最後にまた会えるのなら
答え合わせをしよう

紫苑

誰一人　目にも留めないほどに小さな
誰一人　気付きもしない小さな
秘密基地　ひとりきり
作り続けている
積み木の城　いつまで
こうしていればいい

心のひび割れから
滲んだ思い出
見たくなくて　目を逸らす
それでも

眠りに落ちた夕日の後の
深い闇の中にある
激しく燃える焔の色を感じる


雨風が吹きつけて
錆びついた扉は
開こうと来る人を拒むけれど
秘密基地　ひとりきり
何も知らないまま
積み木の城　崩して
作り直していく

いちばん大事なもの
手に触れることが
怖くなって　遠ざける
それでも

時計の針の進む速さに
自分を見失っても
灯火に似た焔の色を見ている


たった一度も絶やすことなく
守り続けているもの
命が燃える焔の色の強さよ

通過する生(arr.ver.)

深い闇に目が慣れたら
手探りで歩き出す
心の置き場を見つけて
息継ぎをする

遠く遠くなった光の海
今は凪いで音もなくて
思い出が波を打つ
それだけが全て


隠している涙の痕
気付かれやしないのに
笑顔を作って見つめる
未来の途中

もしも全て嘘で　明日になれば
思い描く朝が来ると
夢を見ることもある
祈りに似た夢


いつか闇を抜けて　声を上げて
言えなかった言葉たちを
祝福に包まれて
届けられたなら

願う心はまだ冷えた手で
震えながら繋いでいる
一筋の道が見える
日を待っている

ひつじ

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